「家庭用ルーターがサイバー犯罪の踏み台になり、約29億円の被害につながった」というニュースを見て、「自宅のWi-Fiも危険なのでは」と不安になった人もいるのではないでしょうか。
ところが、警察庁などが示している対策には、「無料VPNを利用しない」「ファームウェアを更新する」「通信帯域を提供するサービスを避ける」といった、普段あまり聞かない言葉が並んでいます。
無料VPNとは何なのか、ファームウェアはどこにあるのか、正規販売店とはどこなのかが分からなければ、注意を呼びかけられても実際には行動できません。
また、「古いルーターは危険」といわれても、何年製が古いのか、どのメーカーが対象なのか判断に迷ってしまいます。
この記事では、約29億円の被害がどのように発生したのかを整理したうえで、公的機関が示している対策を、初心者が確認しやすい7項目に整理して解説します。
自宅のルーターの探し方、型番の見方、無料VPNや不審な動画視聴機器の見分け方、更新や買い替えの判断方法まで紹介します。
記事を読みながら、一つずつ確認してみてください。
家庭用ルーターがサイバー犯罪の踏み台に|最初に知っておきたい結論
今回のニュースで最も重要なのは、家庭にあるインターネット機器が、持ち主の知らないところで犯罪者の通信を中継する可能性があることです。
2026年7月21日、警察庁・総務省・NICTは、家庭用IoT機器を悪用する「レジデンシャルプロキシ」の実態と対策を公表しました。
NICTによると、2024年中のインターネットバンキング不正送金のうち、少なくとも1,918件、被害額約28.9億円でレジデンシャルプロキシが利用されていました。
これは被害件数全体の約44%、被害額全体の約33%です。
「44%」は被害額の割合ではない
数字は、次のように分けて理解する必要があります。
| 項目 | 公式発表の数字 |
|---|---|
| レジデンシャルプロキシが 利用された不正送金 | 少なくとも1,918件 |
| 被害額 | 約28.9億円 |
| 被害件数全体に占める割合 | 約44% |
| 被害額全体に占める割合 | 約33% |
ニュースを見て、「ルーターを使っている家庭から29億円が盗まれた」と受け取った人もいるかもしれません。
しかし、この約29億円は、踏み台になった家庭が直接失った金額を示すものではありません。
犯罪者が一般家庭の機器や回線を経由して行った、不正送金事件の被害額です。
国内には少なくとも数万台規模が存在すると推定
NICTは2026年1月以降、1日あたり最大約2万7,000のIPアドレスを、レジデンシャルプロキシの出口として観測しています。
この調査から、国内にも少なくとも数万台規模のレジデンシャルプロキシが存在すると推定されています。
ただし、このニュースを見ただけで「自宅のルーターも感染している」と決めつける必要はありません。
大切なのは、怖がるだけではなく、自宅にある機器やアプリを確認し、更新や設定変更などの基本的な対策を行うことです。

サイバー犯罪の「踏み台」とは?住所に置き換えると分かりやすい
「踏み台」とは、犯罪者が自分から直接アクセスせず、他人の機器やインターネット回線を途中に挟むことです。
インターネット上では、通信元を識別するために「IPアドレス」という番号が使われます。
IPアドレスは、インターネット上の住所のようなものです。
犯罪者が自宅の住所を借りるような状態
通常の通信は、次のように進みます。
犯罪者の端末
↓
銀行や企業のサイト
家庭用機器が踏み台にされると、次のようになります。
犯罪者の端末
↓
犯罪者とは関係のない一般家庭のルーターやインターネット機器
↓
銀行や企業のサイト
銀行や企業から見ると、最後に通信を出した家庭のIPアドレスが記録されます。
これは、犯罪者が自分の住所を隠し、関係のない人の住所を差出人欄に書いて荷物を送るような状態です。
レジデンシャルプロキシとは
レジデンシャルプロキシとは、一般家庭のインターネット回線に接続された機器が、第三者の通信を中継する仕組みです。
「レジデンシャル」は住宅、「プロキシ」は代理や中継を意味します。
一般家庭の回線を通ると、銀行や企業からは、犯罪者ではなく一般家庭から通信されたように見えます。
そのため、犯罪者の本当の居場所や通信元を特定しにくくなり、海外からのアクセス制限や、不正アクセスを見つける仕組みをすり抜ける目的で悪用されます。
持ち主が悪用に気づきにくいことも問題
機器が踏み台になっていても、Wi-Fiや動画視聴などを普段どおり利用できる場合があります。
そのため、「インターネットにつながっているから安全」とは判断できません。
警察庁も、所有者が自分の機器を悪用されていると認識していない場合が多いと説明しています。
自宅のどの機器を確認すればよい?
今回の問題は、Wi-Fiルーターだけに限りません。
インターネットにつながるカメラ、テレビ、動画視聴機器なども確認する必要があります。
このような機器は「IoT機器」と呼ばれます。
IoT機器とは
IoT機器とは、インターネットにつながり、情報を送ったり受け取ったりする機器のことです。
家庭では、Wi-Fiルーター、見守りカメラ、スマートテレビ、動画視聴機器、Wi-Fi中継機などが該当します。
今回の問題では、スマートフォンやタブレットも、利用するアプリによって第三者の通信を中継する可能性があります。
NICTは、次のような機器が悪用される場合があると説明しています。
| 機器 | 家庭での使われ方 |
|---|---|
| Wi-Fiルーター | スマートフォンやテレビをインターネットにつなぐ |
| 動画ストリーミング機器 | テレビで動画配信を見る |
| ネットワークカメラ | 防犯、見守り、ペットの確認に使う |
| デジタルフォトフレーム | インターネット経由で写真を受け取って表示する |
| スマートフォン・タブレット | アプリを通じて通信する |
| スマートテレビ | 動画配信サービスやアプリを利用する |
| Wi-Fi中継機 | Wi-Fiが届く範囲を広げる |
有名な動画視聴機器がすべて危険という意味ではない
テレビにつなぐ機器には、正規の動画配信サービスを視聴するための一般的な製品もあります。
今回の発表では、特定メーカーの正規製品が一律に危険だとは説明されていません。
問題となるのは、製造元や販売元が分からない機器、本来有料の動画を契約なしで見られるとうたう機器、更新方法や問い合わせ先を確認できない機器などです。
見た目だけで判断せず、販売者、メーカー、型番、利用する動画サービスを確認しましょう。
公的機関が示す対策を初心者向けに7項目へ整理
NICTの公式発表では、不審な動画機器を使わないこと、提供元不明のアプリや無料VPNを使わないこと、通信帯域を提供して収益を得るサービスを避けること、OSやファームウェアを最新にすることなどが示されています。
ここでは、NOTICEやIPAなどの公的な安全対策も加え、初心者が実際に確認しやすい7項目に整理して説明します。
ポイント1.不審な動画視聴機器を購入・利用しない
簡単にいうと、「本来は有料の動画を、契約せず永久に無料で見られる」と宣伝する正体不明の機器を避けるという意味です。
具体的にはどんな物?
テレビのHDMI端子などにつなぐ、箱型またはスティック型の機器です。
一般に、次のような名称で販売されることがあります。
- 動画ストリーミングデバイス
- セットトップボックス
- TV Box
- Android TV Box
- メディアプレーヤー
ただし、この名称が付いている製品がすべて危険なわけではありません。
注意したい売り文句
- 国内外の有料放送がすべて無料
- 映画やスポーツを永久無料で視聴
- 月額料金なしで全チャンネル見放題
- 面倒な契約は一切不要
- テレビにつなぐだけで世界中の番組が見られる
- 特別な設定済み
- 一般の店では買えない限定品
NICTの資料でも、「テレビに接続して無料で国内外の動画を視聴できます」などとうたう動画ストリーミング機器が例として挙げられています。
危険性を疑うチェックポイント
- メーカー名が書かれていない
- 型番がない
- 公式サイトが見つからない
- 問い合わせ先がない
- ファームウェアの更新方法がない
- メーカー保証がない
- 不自然に安い
- 正体不明のアプリが最初から多数入っている
- 外部サイトからアプリファイルを入れるよう指示される
- セキュリティ設定を解除するよう指示される
- 有料サービスを無断で見られるとうたっている
今使っている場合はどうする?
直ちに犯罪に利用されていると決めつけることはできません。
まず、次を確認してください。
- 本体のメーカー名と型番を撮影する
- メーカーの公式サイトがあるか確認する
- 購入した店と販売者を確認する
- 利用している動画サービスが正規契約か確認する
- 更新方法や問い合わせ先が見つかるか確認する
製造元や用途が確認できない場合は、いったんインターネット接続を外し、購入店、メーカー、契約中のインターネット事業者へ相談する方が安全です。
ポイント2.アプリや機器は信頼できる販売元から入手する
「正規販売店」とは、単に有名なショッピングサイトを指す言葉ではありません。
重要なのは、誰が商品を販売し、問題が起きたときに誰が責任を持つのかが分かることです。
比較的安心して購入しやすい場所
- メーカーの公式オンラインストア
- メーカー公式サイトで案内されている販売店
- 実店舗のある家電量販店
- 通信会社やインターネット回線会社
- オンラインモール内のメーカー公式店
- メーカー保証と国内の問い合わせ窓口がある販売店
Amazonや楽天市場なら安全?
ショッピングモールの名前だけでは判断できません。
同じ商品ページでも、販売者や発送元が違う場合があります。
購入前に次を確認しましょう。
- 販売元の会社名
- 発送元
- 国内正規品か
- メーカー保証が使えるか
- 正式な型番があるか
- 返品先が明記されているか
- 問い合わせ窓口があるか
注意したい販売方法
- 販売者の会社情報が確認できない
- SNSの個人アカウントだけで販売している
- 新品なのに開封済み・設定済み
- 型番を質問しても回答しない
- メーカー保証が使えない
- 相場より極端に安い
- 有料コンテンツを無料で見られることを強調している
- 海外向け製品を改造して販売している
- 中古品に以前の利用者の設定が残っている
オンラインモールや中古品がすべて危険なのではありません。
販売者、型番、保証、更新方法を確認できるかが判断基準です。
アプリはどこから入れる?
スマートフォンやタブレットでは、端末が標準で案内する公式アプリストアを利用することが基本です。
ただし、公式ストアに掲載されているだけで完全に安全とは言い切れません。
インストール前に、次を確認してください。
- 開発会社名
- 公式サイト
- 利用規約
- プライバシーポリシー
- 必要な権限
- 課金方法
- 最近の更新日
- 問い合わせ先
NICTも、信頼できる提供元からアプリを入手し、開発元や利用規約を確認するよう呼びかけています。
ポイント3.提供元不明の無料VPNを安易に利用しない
VPNとは、インターネット通信をVPN事業者のサーバー経由で行う仕組みです。
VPNを簡単に説明すると
通常の通信は、次のように進みます。
自分のスマートフォン
↓
閲覧するサイト
VPNを使うと、途中にVPN事業者が入ります。
自分のスマートフォン
↓
VPN事業者のサーバー
↓
閲覧するサイト
通信の通り道を変えたり、外出先から会社のネットワークへ安全に接続したりする目的で使われます。
なぜ無料VPNに注意が必要なの?
VPNの運営者は、自分の通信が通る経路を提供する立場になります。
そのため、運営会社や仕組みが分からないVPNを利用すると、自分の端末や回線が別の通信の中継に使われる可能性があります。
NICTは、無料VPNの利用によって、本人が認識しないまま端末がレジデンシャルプロキシとして動作する事例があると説明しています。
無料VPNはすべて危険?
無料だから必ず危険という意味ではありません。
有料サービスを提供する会社が、通信量や機能を制限した無料プランを用意している場合もあります。
見るべきなのは、料金よりも次の点です。
- 運営会社が明確か
- 所在地や問い合わせ先があるか
- 何の目的で無料なのか説明されているか
- 利用規約に第三者への通信提供が書かれていないか
- 必要以上の権限を求めていないか
- 自宅回線を他人に貸す仕組みがないか
特に避けたい無料VPN
- 運営会社名が分からない
- 公式サイトや問い合わせ先がない
- 利用規約がない
- 「使うだけで報酬が得られる」と宣伝している
- 「余った通信を有効利用できる」と説明している
- 写真、連絡先、マイクなど不要な権限を求める
- 公式アプリストア以外から入れるよう指示される
- アプリを閉じても通信を続ける仕組みが説明されていない
会社や学校から指定されているVPNは、ここでいう正体不明の無料VPNとは別です。
勝手に削除せず、管理担当者へ確認してください。

ポイント4.通信量を提供して収益を得るサービスを利用しない
これは、自宅のインターネット回線を第三者に使わせる代わりに、現金、ポイント、暗号資産などの報酬を受け取るサービスです。
どのような言葉で宣伝される?
- 余った通信量をお金に変える
- 使っていない帯域をシェア
- パソコンを起動しておくだけで収入
- アプリを入れて放置するだけ
- ネット回線を貸してポイント獲得
- 不労所得が得られる
- ノードを運営して報酬を得る
- 帯域幅を共有する
何が問題なの?
アプリを入れると、自宅の端末や回線が、第三者の通信の出口になる場合があります。
第三者が行ったアクセスであっても、相手のサイトには自宅のIPアドレスが記録される可能性があります。
誰が、何の目的で、どこへ通信するのかを利用者が管理できない場合は、犯罪や規約違反の通信に使われる危険があります。
NICTも、通信帯域を提供して収益を得られるとうたうサービスを安易に利用しないよう呼びかけています。
携帯会社の「余ったギガ」とは別
携帯電話会社が提供する、余ったデータ容量の繰り越しや、家族間のデータ共有などとは仕組みが異なります。
今回注意が必要なのは、自分の端末や自宅回線を、不特定の第三者の通信中継に使わせるサービスです。
利用規約で探したい言葉
- 帯域の共有
- 第三者への再提供
- プロキシ
- 出口ノード
- ピア・ツー・ピア
- 住宅用IP
- バックグラウンド通信
- 第三者のトラフィック
意味が分からないまま同意せず、サービス名と「仕組み」「帯域共有」「プロキシ」を組み合わせて調べましょう。
ポイント5.ルーターやIoT機器のファームウェアを更新する
ファームウェアとは、ルーターやネットワークカメラなどの機器を動かしている内部ソフトです。
スマートフォンでいうOSに近いものと考えると分かりやすいでしょう。
なぜ更新が必要?
機器が発売された後、新しいセキュリティ上の弱点が見つかることがあります。
メーカーは、その弱点を修正するために新しいファームウェアを公開します。
古い状態のままでは、すでに知られている弱点が残り続ける可能性があります。
NOTICEも、ファームウェアを更新していないIoT機器は、サイバー攻撃に悪用される危険性が高まると説明しています。
どの機器を更新する?
- Wi-Fiルーター
- Wi-Fi中継機
- ネットワークカメラ
- 防犯カメラ
- 見守りカメラ
- スマートテレビ
- 動画視聴機器
- デジタルフォトフレーム
- スマート家電
- インターネットにつながる録画機
ルーターがどれか分からない場合
家の中で、次の場所を探してみてください。
- 光回線のケーブルが入っている場所
- 電話機の近く
- テレビの近く
- 廊下や収納棚
- パソコンの近く
- 「Wi-Fi」「Internet」などのランプがある箱
機器が2台以上並んでいることもあります。
光回線の「ONU」と、Wi-Fiルーターが別々になっている場合や、通信会社の機器にルーター機能が入っている場合があります。
どれがルーターか分からなければ、並んでいる機器のラベルをそれぞれ撮影し、通信会社へ確認してください。
型番はどこを見る?
本体の底面、背面、側面にあるシールを確認します。
次の表示を探してください。
- 型番
- Model
- MODEL
- 製品名
- Product Name
SSIDや暗号化キーも同じシールに書かれていることがあります。
シール全体の写真をインターネットやSNSへ公開しないでください。
更新を確認する手順
- メーカー名と型番をメモする
- 「メーカー名+型番+ファームウェア」で検索する
- メーカー公式サイトを開く
- 最新バージョンの番号と更新日を確認する
- 自動更新機能があれば有効にする
- 手動更新の場合は公式の説明書どおりに行う
更新中に電源を抜くと、機器が正常に動かなくなる可能性があります。
操作方法が分からない場合は、無理に進めずメーカーや回線事業者へ相談してください。
IPAのJC-STARでも、自動更新機能がある場合は有効にし、ない場合は定期的にバージョンを確認するよう案内しています。
通信会社から借りているルーターの場合
レンタル機器は、自分でファームウェアを入れたり、勝手に交換したりせず、契約している通信会社へ問い合わせます。
次のように伝えると分かりやすいでしょう。
自宅で使用している機器の型番は「〇〇」です。現在もセキュリティサポート中でしょうか。ファームウェアは自動更新されていますか。
ポイント6.サポートが終了した古い機器は買い替える
サポート終了とは、電話相談ができなくなるだけではありません。
機種によっては、次の対応も終了します。
- セキュリティ問題の修正
- ファームウェアの公開
- 修理
- 問い合わせ対応
- 設定アプリの更新
- 新しい通信規格への対応
サポート終了後に新しい弱点が発見されても、修正されない可能性があります。
IPAは、サポートが終了したIoT製品では、セキュリティ上の弱点が見つかってもファームウェア更新が行われず、安全に使い続けることが難しくなるため、買い替えを検討するよう案内しています。
何年製なら危険?
「購入から何年で危険」という全メーカー共通の基準はありません。
購入した年だけではなく、型番ごとのサポート状況を確認する必要があります。
長期間使用しているルーターは、購入年だけで判断せず、メーカー公式サイトでサポートが続いているか確認してください。メーカーによってサポート期間は異なります。
危険なメーカーはある?
今回の公式発表では、危険なメーカーの一覧は示されていません。
有名メーカーでも、現在販売されている機種と、すでにサポートが終了した機種があります。メーカー名だけではなく、必ず型番を確認してください。
例えばAtermは、2026年7月時点で販売終了から約3年間をサポート期間とし、型番ごとの状況を公式サイトに掲載しています。
これはAtermの例であり、他社にも共通する一律の期限ではありません。
サポート状況の検索方法
次のように検索します。
メーカー名+型番+サポート終了
メーカー名+型番+ファームウェア
メーカー名+型番+セキュリティ情報
検索結果では、メーカー公式サイトを優先してください。
買い替えを優先したい状態
- メーカーがサポート終了と明記している
- ファームウェアが何年も更新されていない
- メーカー公式サイトに型番情報がない
- 製造会社や問い合わせ先が分からない
- 更新機能がない
- 中古で購入し、以前の設定が残っている
- 管理画面に入れず、設定状況を確認できない
- セキュリティ上の問題が公表され、修正版がない
新しく購入するときはJC-STARも参考にする
JC-STARは、IoT製品のセキュリティ機能が一定の要件に適合していることを示す制度です。
適合製品にはラベルと登録番号が表示され、製品情報、サポート期間、アップデート情報、問い合わせ先などを確認できます。
ただし、JC-STARのラベルがあれば、購入後に何もしなくても安全という意味ではありません。
購入後もパスワードの設定、ファームウェアの更新、サポート状況の確認が必要です。

ポイント7.初期パスワードを推測されにくいものへ変更する
ルーターには、主に2種類のパスワードがあります。
| パスワード | 用途 |
|---|---|
| Wi-Fi接続用パスワード | スマートフォンやテレビをWi-Fiにつなぐ |
| 管理者パスワード | ルーターの設定画面を開く |
今回、特に確認したいのは管理者パスワードです。
管理者パスワードを知られると何が起きる?
第三者に設定画面へ入られると、次のような設定を変更される可能性があります。
- 通信先の設定
- DNS設定
- 外部接続の設定
- Wi-Fiの設定
- 利用者が知らない機能の有効化
- セキュリティ設定
- ファームウェア関連の設定
DNSとは、ウェブサイトの名前を、インターネット上の住所へ変換する仕組みです。
DNS設定を不正に変更されると、偽のウェブサイトへ誘導される可能性があります。
避けたいパスワード
- admin
- password
- 123456
- 自分や家族の名前
- 生年月日
- 電話番号
- Wi-Fi名と同じ文字
- 他のサービスでも使っているパスワード
パスワードを作るポイント
- できるだけ長くする
- 名前や誕生日を避ける
- 他のサービスと使い回さない
- 大文字、小文字、数字、記号を組み合わせる
- 紙や信頼できるパスワード管理アプリに記録する
- 家族以外には教えない
JC-STARでは、初回設定時に管理者パスワードの変更を求める仕組みを基本とし、推測されにくい複雑なパスワードへ変更するよう案内しています。
初期パスワードが複雑なら変更しなくてよい?
最近の機器では、1台ごとに異なる複雑な初期パスワードが設定されていることがあります。
最初から機器ごとに異なる、十分に複雑なパスワードが設定されている場合は、必ずしも変更が必要とは限りません。
ただし、説明書や初回設定画面で変更を求められた場合は、案内に従って変更してください。
中古品、譲り受けた機器、他人に設定してもらった機器では、以前の所有者や作業者がパスワードを知っている可能性があります。
初期化や変更について、メーカーの説明書を確認しましょう。

自宅は大丈夫?5分でできるセルフチェック
次の項目を確認してください。
- □ ルーターのメーカー名と型番を確認できる
- □ メーカーの公式サイトが見つかる
- □ サポート期間中である
- □ ファームウェアが自動更新または最新版になっている
- □ 管理者パスワードを設定している
- □ テレビの裏に用途不明の機器がない
- □ 有料動画を永久無料で見られるとうたう機器を使っていない
- □ 提供元不明の無料VPNを使っていない
- □ 通信量を共有して報酬を得るアプリを使っていない
- □ 家にあるネットワークカメラや中継機も確認した
- □ 製造元や用途が分からない中古機器を接続していない
- □ 困ったときのメーカー・回線会社の連絡先が分かる
チェックできなかった項目があっても、それだけで乗っ取られているとは限りません。
分からない項目を一つずつ調べるための確認表として使ってください。
乗っ取られているか確認する簡単な方法はある?
残念ながら、一般利用者が画面を一度見るだけで、レジデンシャルプロキシとして悪用されているかを確実に判定する方法はありません。
通信が遅いだけでは判断できない
次のような変化が出る可能性はあります。
- 通信量が不自然に増えた
- ルーターが頻繁に再起動する
- 設定が勝手に変わっている
- 知らない接続機器が表示される
- 使用していない時間にも通信ランプが激しく点滅する
- 利用しているサービスから不審なアクセスとして制限された
しかし、これらは回線障害、機器の故障、家族の端末、動画視聴、クラウドへのバックアップなどでも起こります。
症状だけで「犯罪に使われている」と断定しないでください。
不安な機器が見つかったときの対応
- メーカー名と型番を記録する
- 購入先と利用開始時期を確認する
- メーカー公式サイトで注意情報を確認する
- 不明なアプリやサービスの利用を停止する
- 必要に応じて機器をインターネットから外す
- メーカーまたは回線事業者へ相談する
- 指示に従って更新、初期化、交換を行う
初期化するとインターネット接続設定が消える場合があります。
説明書を読まずにリセットボタンを押すことは避けましょう。
今すぐ行うことを優先順位で整理
何から始めればよいか迷う場合は、次の順番で確認してください。
優先度1.ルーターの型番を撮影する
まずは本体の底面や背面を見て、メーカー名と型番を確認します。
SSIDやパスワードが写ることがあるため、撮影した画像をSNSへ投稿しないでください。
優先度2.メーカー公式サイトでサポート状況を確認する
「メーカー名+型番+サポート終了」で検索します。
優先度3.ファームウェアの更新状況を確認する
自動更新の有無と、最新バージョンを確認します。
優先度4.不審なアプリと動画機器を確認する
無料VPN、通信量共有、放置して稼ぐアプリ、提供元不明の動画機器がないか確認します。
優先度5.管理者パスワードを確認する
Wi-Fi接続用ではなく、設定画面に入るための管理者パスワードを見直します。
優先度6.ルーター以外のIoT機器を確認する
ネットワークカメラ、Wi-Fi中継機、動画視聴機器、デジタルフォトフレームなども確認します。
よくある疑問Q&A
Q.自宅のルーターが踏み台になると、逮捕されるのですか?
所有者が知らないうちに悪用されたからといって、直ちに犯罪者として扱われるという意味ではありません。
ただし、自宅のIPアドレスが犯罪通信の記録に残り、状況確認が必要になる可能性はあります。
警察庁は、所有者が悪用を認識していない事例が多いと説明しています。
Q.有名メーカーのルーターなら何もしなくても安全ですか?
有名メーカーでも、更新やサポートが終了した機種はあります。
メーカー名だけで判断せず、型番、ファームウェア、サポート状況を確認してください。
Q.ルーターを5年以上使っていたら、すぐ交換するべきですか?
5年は確認を始める一つの目安にすぎず、公式の一律な危険ラインではありません。
公式サイトでサポート期間中と確認でき、ファームウェアが更新されている場合は、使用年数だけで判断する必要はありません。
Q.無料VPNを入れていたら、すぐに犯罪へ利用されますか?
無料VPNを利用しただけで、必ず悪用されるわけではありません。
運営会社、利用規約、端末の権限、通信帯域の第三者提供がないかを確認してください。
提供元や仕組みを確認できない場合は、利用を停止する方が安全です。
Q.Amazonやフリマサイトで買った機器は危険ですか?
購入場所だけで危険とは判断できません。
販売元、型番、国内保証、公式サポート、開封・改造の有無を確認することが重要です。
中古品や設定済み製品は、以前の設定が残っていないか特に注意してください。
Q.Wi-Fiのパスワードを変えれば十分ですか?
Wi-Fi接続用パスワードだけでは不十分です。
ルーターの管理者パスワード、ファームウェア、サポート状況、不明なアプリや機器も確認してください。
Q.機械が苦手で設定画面を開けません
無理に設定を変更する必要はありません。
メーカー名と型番を確認し、メーカーまたは契約中の通信会社に次のように相談してください。
家庭用ルーターが犯罪の踏み台になるというニュースを見ました。この型番がサポート中か、ファームウェアが自動更新されているか確認したいです。
まとめ|約29億円のニュースを見たら、まず型番と更新状況を確認しよう
家庭用ルーターなどがサイバー犯罪の踏み台として利用され、2024年中のインターネットバンキング不正送金では、少なくとも1,918件、約28.9億円の被害に関係していたことが明らかになりました。
被害件数では全体の約44%、被害額では約33%を占めています。
さらにNICTの調査では、国内にも少なくとも数万台規模のレジデンシャルプロキシが存在すると推定されています。
ただし、このニュースを見て「家庭用ルーターはすべて危険」「古い機器はすべて犯罪に使われている」と考える必要はありません。
重要なのは、メーカー名だけで判断するのではなく、型番、ファームウェア、サポート状況を確認することです。
また、本来は有料の動画を永久無料で見られるとうたう機器、提供元が分からない無料VPN、自宅の通信を第三者に提供して報酬を得るサービスにも注意が必要です。
ファームウェアや管理者パスワードという言葉が分からなくても、まずルーターの底面や背面にあるシールを撮影すれば、確認を始められます。
自分で設定するのが難しい場合は、メーカーや契約中の通信会社に型番を伝え、「サポート期間中か」「自動更新されているか」と質問してください。
今回の問題で大切なのは、専門的な設定を一人で完璧に行うことではありません。
自宅にどの機器があるかを知り、正体不明の機器やアプリを避け、サポートが続いている製品を最新の状態で使用することです。
ニュースをきっかけに、ルーターだけでなく、ネットワークカメラ、動画視聴機器、Wi-Fi中継機など、家庭内のインターネット機器を一度確認してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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