定年や退職が近づくと、年金のことが一番気になる人は多いと思います。
しかし実際には、年金だけでなく、失業保険、健康保険、医療費、給付金、障害年金など、確認しておきたい制度がいくつもあります。
しかも、制度によっては自分で申請しないと受け取れなかったり、期限を過ぎると手続きが難しくなったりする場合があります。
役所や会社からすべてを分かりやすく教えてもらえれば安心ですが、実際には自分で調べたり、窓口に確認したりすることも大切です。
この記事では、定年前後に確認したいお金と手続きを、できるだけやさしい言葉で一覧にまとめます。
細かい制度の説明は別記事で順番に解説する前提で、まずは「自分に関係しそうな制度」を見つける入口としてご活用ください。
定年前後は「申請が必要な制度」が増える
定年や退職の前後は、確認することが一気に増えます。
年金、健康保険、失業保険、医療費、給付金など、制度の名前を聞くだけでも難しく感じるかもしれません。
しかし、大切なのは全部を一度に覚えることではありません。
まずは、「自分に関係しそうなものはどれか」を見つけることです。
制度には、申請が必要なもの、条件に合えば受け取れるもの、相談して初めて分かるものがあります。
この記事では、細かい計算よりも、まず全体像を分かりやすく整理します。
まずは自分の状況から確認しましょう
制度名から探すと難しく見えます。
そこで、まずは自分の状況から見てみましょう。
| あなたの状況 | 確認したい制度 | 相談先 |
|---|---|---|
| 65歳前後で年金を受け取りたい | 老齢年金の請求手続き | 年金事務所 |
| 年金を早く、または遅くもらうか迷っている | 繰上げ受給・繰下げ受給 | 年金事務所 |
| 年金額や所得が少ない | 年金生活者支援給付金 | 年金事務所・市区町村 |
| 退職後に仕事を探したい | 雇用保険の基本手当 | ハローワーク |
| 65歳以上で退職して仕事を探す | 高年齢求職者給付金 | ハローワーク |
| 退職後に保険証が変わる | 任意継続・国民健康保険・扶養 | 会社・市区町村・協会けんぽ |
| 医療費が高くなりそう | 高額療養費制度 | 健康保険・市区町村 |
| 病気やけがで働けない | 傷病手当金・受給期間延長 | 健康保険・ハローワーク |
| 病気や障害で生活や仕事が難しい | 障害年金・障害者手帳 | 年金事務所・市区町村 |
この表を見るだけでも、年金以外に確認することがあると分かります。
年金で確認したい手続き

年金は、定年後の暮らしで一番大きな柱です。
ただし、年金にもいくつか確認することがあります。
老齢年金の請求手続き
老齢年金は、受け取れる年齢になったら、何もしなくてもすべて自動で振り込まれるというものではありません。
日本年金機構では、紙の年金請求書を提出する場合、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、必要書類と一緒に年金事務所へ提出すると案内しています。
また、年金を請求せず、受けられるようになってから5年を過ぎると、5年を過ぎた分が時効で受け取れなくなる場合があります。
つまり、65歳前後になったら、「年金請求書を出したか」を必ず確認しましょう。
年金をいつから受け取るか
年金は、原則65歳から受け取ります。
ただし、早く受け取る「繰上げ受給」や、遅く受け取る「繰下げ受給」もあります。
ここで大事なのは、何歳からもらうのが絶対に得とは言えないということです。
生活費、健康、働ける年齢、貯金、家族構成によって考え方が変わります。
このテーマは別記事で、60歳・65歳・70歳・75歳のケースに分けて解説します。
年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、所得が一定以下の年金受給者を支えるための給付金です。
老齢基礎年金を受けている人の場合、65歳以上であること、同じ世帯の全員が市町村民税非課税であること、前年の年金収入などが一定額以下であることなどが主な条件です。
厚生労働省は、受け取るには請求手続きが必要と案内しています。
年金額が少ない人は、対象になる可能性があるか年金事務所や市区町村で確認しましょう。
退職後の失業保険・雇用保険で確認したいこと
退職後にまだ働きたい人は、ハローワークの制度も確認しましょう。
一般的に「失業保険」と呼ばれるものは、正式には雇用保険の基本手当です。
基本手当
基本手当は、退職した人全員に自動で出るものではありません。
ハローワークでは、就職する意思と能力があり、積極的に仕事を探しているのに就職できない状態が対象とされています。
簡単に言うと、「仕事を辞めた人へのごほうび」ではなく、「次の仕事を探す人を支える制度」です。
そのため、退職後に仕事を探す予定がある人は、ハローワークで確認しましょう。
高年齢求職者給付金
65歳以上で退職し、仕事を探す人は、高年齢求職者給付金が関係する場合があります。
ハローワークでは、65歳以上の高年齢被保険者が失業した場合、被保険者であった期間に応じて、基本手当日額の30日分または50日分に相当する高年齢求職者給付金が支給されると案内しています。
65歳を過ぎて退職した人でも、仕事を探す意思がある場合は、ハローワークに相談してみましょう。
再就職手当
退職後、早く再就職した場合は、再就職手当が関係することがあります。
再就職手当は、基本手当の受給資格がある人が、早く安定した仕事に就いた場合に支給される制度です。
支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら70%、3分の1以上なら60%の給付率が案内されています。
簡単に言うと、失業保険を最後までもらい切るより、早く仕事が決まった人を応援する制度です。
高年齢雇用継続給付
60歳以降も働き続ける人で、給料が大きく下がった場合は、高年齢雇用継続給付が関係することがあります。
厚生労働省では、60歳以上65歳未満の一般被保険者で、賃金が60歳時点などと比べて75%未満に低下した人などが対象になると案内しています。
再雇用で給料が下がる人は、会社やハローワークで確認しておくと安心です。
教育訓練給付金
退職後や再就職に向けて資格を取りたい人は、教育訓練給付金も確認したい制度です。
厚生労働省では、教育訓練給付金について、働く人の能力開発やキャリア形成を支援するため、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合に、教育訓練経費の一部が支給される制度と説明しています。
資格取得や学び直しを考えている人は、対象講座かどうかを確認しましょう。
退職後の健康保険で確認したいこと
会社を退職すると、健康保険をどうするか決める必要があります。
退職後の保険証は、自動で都合よく切り替わるわけではありません。
主な選択肢は次の3つです。
| 選択肢 | 内容 | 相談先 |
|---|---|---|
| 任意継続 | 退職前の健康保険を続ける | 協会けんぽ・健康保険組合 |
| 国民健康保険 | 市区町村の国保に入る | 市区町村 |
| 家族の扶養 | 家族の健康保険に入る | 家族の勤務先 |
任意継続健康保険
任意継続は、退職前の健康保険を一定期間続ける制度です。
協会けんぽでは、任意継続に加入するには、資格喪失日の前日までに継続して2カ月以上の被保険者期間があること、資格喪失日から20日以内に申出書を提出することなどが条件とされています。
期限が短いので、退職前から確認しておくと安心です。
国民健康保険
退職後に任意継続や家族の扶養に入らない場合は、国民健康保険に入ることがあります。
国民健康保険の手続きは市区町村で行います。
自治体によって案内は少し違いますが、会社などの健康保険を脱退した場合、14日以内に届出が必要と案内している自治体があります。
退職後に保険証がない期間を作らないように、早めに確認しましょう。
家族の扶養
配偶者や子どもの健康保険の扶養に入れる場合もあります。
ただし、収入条件などがあります。
これは家族の勤務先や健康保険組合によって確認が必要です。
医療費が高くなりそうなときに確認したい制度
定年後は、病院に行く機会が増える人もいます。
入院や手術などで医療費が高くなりそうなときは、高額療養費制度を確認しましょう。
高額療養費制度
高額療養費制度は、1カ月の医療費の自己負担が高くなったときに、一定の上限を超えた分が支給される制度です。
厚生労働省は、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月の上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度と説明しています。
また、マイナ保険証を利用すると、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられる場合があります。
限度額適用認定証
入院や手術などで医療費が高くなることが事前に分かっている場合は、限度額適用認定証も確認しましょう。
協会けんぽでは、医療費が高額になることが事前に分かっている場合、マイナ保険証を利用するか、限度額適用認定証を医療機関に提示する方法が便利と案内しています。
医療費が不安な人は、加入している健康保険や市区町村に相談してみましょう。
病気やけがで働けないときに確認したい制度
退職や定年の前後に、病気やけがで働けなくなることもあります。
その場合、失業保険だけでなく、傷病手当金や受給期間延長、障害年金などが関係する場合があります。
傷病手当金
傷病手当金は、病気やけがで会社を休み、十分な給料を受けられないときに生活を支える健康保険の制度です。
協会けんぽでは、退職後も一定の条件を満たす場合、引き続き残りの期間について傷病手当金を受けられると案内しています。
条件として、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること、資格喪失時に傷病手当金を受けているか受ける条件を満たしていることなどが示されています。
病気やけがで退職する場合は、退職前に健康保険へ確認することが大切です。
失業保険の受給期間延長
病気やけがですぐ働けない場合、すぐに基本手当を受けられないことがあります。
基本手当は、働ける状態で仕事を探す人の制度だからです。
そのため、病気やけがで働けない人は、ハローワークで受給期間延長について確認しましょう。
障害年金・障害者手帳で確認したいこと
病気やけがによって、生活や仕事が大きく制限される場合は、障害年金や障害者手帳が関係することがあります。
ここはとても大切ですが、判断が難しい分野です。
障害年金
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事が制限されるようになった場合に、現役世代でも受け取れる可能性がある年金です。
障害基礎年金では、障害の原因となった病気やけがの初診日が国民年金加入期間などにあること、障害の状態が一定の等級に該当すること、保険料納付要件を満たすことなどが必要です。
障害厚生年金では、厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があることなどが要件になります。
簡単に言うと、障害年金で大事なのは次の3つです。
- 初めて病院に行った日
- そのとき加入していた年金制度
- 年金保険料の納付状況
自己判断だけであきらめず、年金事務所に相談しましょう。
障害者手帳
障害者手帳は、障害年金とは別の制度です。
厚生労働省は、障害者手帳について、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種をまとめた呼び方と説明しています。
障害年金と障害者手帳は混同しやすいですが、同じものではありません。
手帳があるから必ず障害年金がもらえるわけでもなく、手帳がないから絶対に障害年金が受けられないとも言い切れません。
このテーマも、別記事で分かりやすく解説します。
生活が苦しいときに確認したい制度

物価高で生活が苦しいときは、年金や失業保険だけでなく、市区町村の制度も確認しましょう。
自治体によっては、国民健康保険料の軽減、介護保険料の減免、住民税非課税世帯向けの支援、生活相談窓口などがあります。
ただし、自治体ごとに内容が違うため、全国共通で「必ずこれがもらえる」とは言えません。
生活が苦しい場合は、市区町村の窓口で、
「自分が使える制度はありますか」
と相談してみることが大切です。
定年前後に確認したい相談先一覧
制度ごとに相談先が違います。
迷ったときは、次の表を参考にしてください。
| 相談したい内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 老齢年金、繰上げ、繰下げ | 年金事務所 |
| 年金請求、年金記録 | 年金事務所、ねんきんネット |
| 年金生活者支援給付金 | 年金事務所、市区町村 |
| 失業保険、基本手当 | ハローワーク |
| 高年齢求職者給付金 | ハローワーク |
| 再就職手当 | ハローワーク |
| 高年齢雇用継続給付 | 会社、ハローワーク |
| 任意継続健康保険 | 協会けんぽ、健康保険組合 |
| 国民健康保険 | 市区町村 |
| 家族の扶養 | 家族の勤務先 |
| 傷病手当金 | 協会けんぽ、健康保険組合 |
| 高額療養費制度 | 加入している健康保険、市区町村 |
| 障害年金 | 年金事務所 |
| 障害者手帳 | 市区町村 |
| 生活支援、減免制度 | 市区町村 |
このカテゴリーで今後作成する記事メニュー
この記事は、定年前後の手続きを全部詳しく説明する記事ではありません。
まずは入口として、今後次のような個別記事につなげていきます。
年金関係
- 年金は何歳からもらうと損?得?60歳・65歳・70歳・75歳の違いを比較
- 年金は自動でもらえる?65歳前後に必要な請求手続き
- 年金生活者支援給付金とは?対象になる人と申請方法
- 年金をもらいながら働くとどうなる?在職老齢年金の基本
失業保険・雇用保険関係
- 退職後の失業保険とは?基本手当をもらえる人・もらえない人
- 65歳以上で退職したら失業保険はどうなる?
- 再就職手当とは?早く仕事が決まった人が確認したい制度
- 60歳以降に給料が下がったら?高年齢雇用継続給付を解説
- 資格を取りたい人へ|教育訓練給付金をやさしく解説
健康保険・医療費関係
- 退職後の健康保険はどうする?任意継続・国民健康保険・扶養を比較
- 医療費が高くなったらどうする?高額療養費制度を解説
- 入院前に確認したい限度額適用認定証とは?
- 退職後も傷病手当金はもらえる?確認ポイント
障害年金・障害者手帳関係
- 障害年金とは?病気やけがで働きにくくなった人が知りたい制度
- 障害基礎年金と障害厚生年金の違い
- 障害年金と障害者手帳は違う?混同しやすいポイント
- 特別障害者手当とは?重い障害がある人のための制度
注意:この記事だけで判断しないでください
この記事は、制度の入口を分かりやすく整理したものです。
実際に対象になるかどうか、いくら受け取れるか、いつまでに申請する必要があるかは、人によって違います。
特に、年金、失業保険、傷病手当金、障害年金は、年齢、収入、退職理由、加入していた保険、健康状態などによって判断が変わります。
分からないときは、年金事務所、市区町村、ハローワーク、協会けんぽ、健康保険組合などで確認してください。
まとめ
定年前後は、年金のことだけを考えればよいと思いがちです。
しかし実際には、年金請求、失業保険、健康保険、医療費、傷病手当金、障害年金など、確認しておきたい制度がたくさんあります。
しかも、制度によっては自分で申請しないと使えなかったり、期限を過ぎると不利になったりする場合があります。
とはいえ、すべてを一度に覚える必要はありません。
大切なのは、まず自分に関係しそうな制度を見つけることです。
65歳前後で年金を受け取る人は年金請求、退職後に仕事を探す人はハローワーク、健康保険が変わる人は市区町村や協会けんぽ、病気やけがで働けない人は健康保険や年金事務所など、相談先を分けて考えると分かりやすくなります。
また、制度の条件は人によって違います。
同じ定年退職でも、年齢、収入、働く意思、加入していた保険、健康状態、家族構成によって、確認すべき内容は変わります。
そのため、ネットの情報だけで「自分は対象外だ」と決めつけないことも大切です。
この「定年後の暮らし」カテゴリーでは、今後、年金、失業保険、健康保険、医療費、障害年金などを一つずつ分かりやすく解説していきます。
定年後の生活に不安を感じる人が、少しでも安心して次の一歩を考えられるように、制度の入口をやさしく案内していきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
「参考にした公的情報」
老齢年金の請求手続き:日本年金機構は、年金請求をせず受給できるようになってから5年を過ぎると、5年を過ぎた分が時効で受け取れなくなる場合があると案内しています。
年金生活者支援給付金:厚生労働省は、65歳以上の老齢基礎年金受給者で、世帯全員が市町村民税非課税などの要件を案内しています。
高年齢求職者給付金:ハローワークは、65歳以上の高年齢被保険者が失業した場合、被保険者期間に応じて30日分または50日分相当が支給されると説明しています。
任意継続健康保険:協会けんぽは、継続2カ月以上の被保険者期間と、資格喪失日から20日以内の申出を条件として案内しています。
本記事の内容は、公開日時点の公的情報をもとに作成しています。
制度内容や対象条件は変更される場合があります。
実際に対象になるかどうかは、年金事務所、市区町村、ハローワーク、協会けんぽ、健康保険組合などで最新情報を確認してください。
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