退職後の生活を考えたとき、「失業保険はもらえるのだろうか」「定年退職でも対象になるのだろうか」と不安になる方は少なくありません。
給与から雇用保険料を支払ってきたため、退職すれば自動的に給付を受けられると思っている方もいるでしょう。
しかし、一般に失業保険と呼ばれている「雇用保険の基本手当」は、退職したすべての人に支給されるものではありません。
基本手当は、働く意思と能力があり、仕事を探しているにもかかわらず、就職できていない人を支えるための制度です。
そのため、しばらく働く予定がない場合や、病気やケガですぐ働けない場合、求職活動をしない場合などは、基本手当を受けられない可能性があります。
この記事では、基本手当をもらえる人・もらえない可能性がある人、定年退職後の扱い、ハローワークでの手続き、支給開始時期や金額の考え方を初心者向けに解説します。
病気やケガの場合や、傷病手当金との違いについても整理します。
自分だけで受給できるかを判断するのではなく、ハローワークへ相談する前の基礎知識としてお役立てください。
この記事の結論
- 退職しただけでは、失業保険を自動的にもらえるわけではありません
- 働く意思と能力があり、実際に求職活動をすることが必要です
- 定年退職後でも、再就職を希望し、条件を満たせば対象になる可能性があります
- 病気やケガですぐ働けない場合は、受給期間延長や傷病手当金を確認しましょう
- 最終的な受給資格や離職理由は、ハローワークが個別に判断します
失業保険は、退職後の生活費として誰にでも支給される制度ではありません。
正式には雇用保険の「基本手当」といい、働ける状態で再就職を目指している人を支える制度です。
自分が対象になるか迷う場合は、離職票や雇用保険の加入状況を確認したうえで、住所地を管轄するハローワークへ相談しましょう。
知りたい内容からお読みください
この記事は情報量が多いため、最初からすべて読む必要はありません。ご自身の状況に近い項目を選んでご覧ください。
- 失業保険の仕組みを知りたい方
→ 「退職後の失業保険とは?」をご覧ください - もらえる条件や対象外となる場合を知りたい方
→ 「失業保険をもらえる人の条件」と「失業保険をもらえない可能性がある人」をご覧ください - 定年退職後も対象になるか知りたい方
→ 「定年退職後でも失業保険はもらえる?」をご覧ください - 自己都合・会社都合・定年退職の違いを知りたい方
→ 「自己都合退職・会社都合退職・定年退職で何が違う?」をご覧ください - ハローワークでの手続きを知りたい方
→ 「失業保険の手続きの流れ」をご覧ください - いつから・いくら・何日分もらえるか知りたい方
→ 「失業保険はいつから・いくら・何日もらえる?」をご覧ください - 病気やケガですぐ働けない方
→ 「病気やケガですぐ働けない場合はどうする?」をご覧ください - 傷病手当金・健康保険・年金との違いを知りたい方
→ 「退職後に確認したい制度の違い」をご覧ください - 申告や離職票の注意点を確認したい方
→ 「退職後の失業保険で注意したいこと」をご覧ください - よくある疑問への答えを確認したい方
→ 「退職後の失業保険についてよくある質問」をご覧ください
個別の事情によって判断が異なる場合があります。
この記事で基本的な考え方を整理したうえで、分からない点はハローワークや各制度の窓口へ確認してください。
退職後の失業保険とは?

退職後の失業保険は、再就職を目指して求職活動をする人の生活を支える制度です。
正式には雇用保険の基本手当
一般には「失業保険」や「失業手当」と呼ばれていますが、正式には雇用保険の「基本手当」といいます。
基本手当は、雇用保険に加入していた人が離職し、働く意思と能力があるにもかかわらず就職できない場合に支給されるものです。
退職後の生活費を一律に補償する制度ではなく、再就職に向けて活動する人を支える役割があります。
退職したら必ずもらえるわけではない
退職したという事実だけでは、基本手当の受給条件を満たしません。
ハローワークでは、次のような状態にあるかが確認されます。
- 就職しようとする意思がある
- 採用されればすぐ働ける能力がある
- 実際に求職活動をしている
- 仕事を探しているが、まだ就職できていない
反対に、病気やケガですぐ働けない人、定年退職後にしばらく休養する予定の人、家事に専念してすぐ就職できない人などは、その期間は基本手当の対象にならない可能性があります。
再就職を目指す人のための制度
基本手当を受けるには、ハローワークで求職の申込みを行い、求人への応募や職業相談などの求職活動を続ける必要があります。
失業保険は自動的に支給されるものではなく、自分で手続きを行う制度です。
定年前後に確認しておきたい制度全体を知りたい方は、「定年前後に申請しないともらえない可能性がある制度まとめ|年金・失業保険・健康保険・障害年金をやさしく案内」も参考にしてください。
失業保険をもらえる人の条件
基本手当を受けるには、雇用保険の加入期間だけでなく、働く意思と能力、求職申込み、求職活動などの条件を満たす必要があります。
雇用保険に加入していた
一般的には、離職日の前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要です。
倒産や解雇、雇止め、正当な理由のある離職などで特定受給資格者や特定理由離職者に該当する場合は、離職前1年間に通算6か月以上あれば受給資格を得られることがあります。
離職理由は本人の申告だけで決まるものではなく、離職票や会社側の説明、提出された資料などをもとにハローワークが判断します。
働く意思と能力がある
「働く意思がある」とは、条件に合う仕事が見つかれば働きたいと考え、実際に仕事を探している状態です。
「働く能力がある」とは、健康状態や家庭の事情を含め、採用されれば働き始められる状態をいいます。
希望する職種、勤務地、勤務時間などに条件があるだけで、直ちに対象外になるわけではありません。
ただし、実際には就職できないほど条件を限定している場合などは、個別に確認される可能性があります。
ハローワークで求職の申込みをする
基本手当の手続きは、原則として住所地を管轄するハローワークで行います。
ハローワークで求職の申込みをした後、雇用保険被保険者離職票1・2を提出し、受給資格の確認を受けます。
求職活動を行う
受給資格が認められた後も、基本手当を受けるには継続して求職活動を行う必要があります。
求職活動に該当する主な例は、次のとおりです。
- 求人へ応募する
- ハローワークで職業相談を受ける
- 民間の職業紹介事業者で職業相談を受ける
- 対象となる就職セミナーへ参加する
- 再就職に役立つ資格試験を受験する
失業認定対象期間中に必要な求職活動実績は、原則として2回以上です。
ただし、初回認定日の前日までの期間は、1回以上となる場合があります。給付制限の有無や認定対象期間によって必要な回数が異なることがあるため、雇用保険受給説明会や受給資格者証、ハローワークの案内で確認してください。
求人情報を閲覧しただけでは、求職活動実績として認められない場合があります。活動実績に該当するか分からない場合は、事前にハローワークへ確認しましょう。
失業認定を受ける
受給資格の決定後は、原則として4週間に1度、指定された認定日に失業認定を受けます。
認定日には、求職活動の内容、就職やアルバイトの状況などを失業認定申告書に記入します。
認定を受けなければ、その期間の基本手当は原則として支給されません。
もらえる人・もらえない人の比較表
| 状況 | 対象になる可能性 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 再就職する意思がある | あり | 加入期間、求職申込み、求職活動 |
| 定年後も働きたい | あり | 年齢、加入期間、働ける状態 |
| しばらく働く予定がない | 低くなる可能性 | すぐ働く意思があるか |
| 病気やケガですぐ働けない | 注意が必要 | 受給期間延長、傷病手当金 |
| 家事や介護で就職できない | 注意が必要 | 採用後すぐ働けるか |
| 雇用保険に加入していない | 低い | 加入履歴を確認 |
| 求職活動をしない | 低い | 失業認定の条件 |
| 自営業の準備に専念している | 個別確認 | 失業状態または受給期間の特例 |
失業保険をもらえない可能性がある人
基本手当の要件を満たさない場合や、すぐ就職できる状態ではない場合は、受給できない可能性があります。
すぐに働く意思がない
「退職後は半年ほど休みたい」「旅行をしてから仕事を探したい」という場合、休んでいる期間は基本手当の前提となる失業状態に該当しない可能性があります。
特に定年退職後は、仕事を完全に引退するのか、休養後に再就職するのかを整理する必要があります。
病気やケガですぐ働けない
療養が必要で、仕事が決まってもすぐ働き始められない場合は、基本手当を直ちに受けられない可能性があります。
病気やケガで30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申請できることがあります。
家事や介護などで就職できない
家事や家族の介護に専念しており、求人が見つかっても働き始められない状態では、基本手当の対象にならない可能性があります。
ただし、親族の介護などで30日以上働けない場合は、受給期間延長の対象になることがあります。
早めにハローワークへ相談しましょう。
求職活動をしない
受給資格が認められても、必要な求職活動実績がなければ、失業認定を受けられないことがあります。
「失業保険をもらいながら、しばらく何もしない」という利用方法はできません。
雇用保険の加入期間が足りない
雇用保険に加入していても、受給資格に必要な被保険者期間に達していなければ、基本手当を受けられない可能性があります。
複数の会社で加入していた期間を合算できることもあるため、過去の加入履歴を含めてハローワークへ確認しましょう。
自営業を始める場合
自営業を始めた場合や、開業準備に専念している場合は、基本手当の前提となる失業状態と認められにくくなります。
一方、一定の条件を満たして手続きを行えば、事業を行っている期間を基本手当の受給期間に算入しない特例を利用できる場合があります。
定年退職後でも失業保険はもらえる?
定年退職後でも、再就職する意思と能力があり、その他の条件を満たせば雇用保険の給付対象になる可能性があります。
再就職する意思があれば対象になる可能性がある
定年という理由だけで、基本手当の対象外になるわけではありません。
定年退職後も「条件に合う仕事があれば働きたい」と考え、求職活動を行う場合は、年齢、加入期間、離職理由などに応じた給付の対象になる可能性があります。
働く予定がない場合は注意
定年退職を機に仕事から完全に引退し、今後働く予定がない場合は、基本手当の前提となる働く意思がないと判断される可能性があります。
また、「いずれ働くつもりだが、今は休みたい」という場合も、休養中は失業状態と認められない可能性があります。
60歳以上で定年退職などを理由にしばらく休養する場合は、一定の条件で受給期間延長の対象になることがあります。
退職後に放置せず、ハローワークへ相談してください。
65歳以上は高年齢求職者給付金になる場合がある
離職時に65歳以上の高年齢被保険者だった人は、一般の基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」の対象になる場合があります。
高年齢求職者給付金にも、働く意思と能力があること、求職申込みをすること、原則として離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることなどの要件があります。
支給額は、被保険者期間が1年未満の場合は基本手当日額の30日分、1年以上の場合は50日分に相当する額です。
「65歳以上だから何も受け取れない」「定年退職なら必ず受け取れる」と決めつけず、年齢と加入状況を確認しましょう。
離職理由の確認が大切
定年退職、自己都合退職、会社都合退職では、給付制限や所定給付日数などが異なる場合があります。
会社から離職票を受け取ったら、記載された離職理由が実際の退職経緯と合っているかを確認してください。
自己都合退職・会社都合退職・定年退職で何が違う?
離職理由は、基本手当を受け始める時期や所定給付日数などに影響することがあります。
受給開始時期が変わる場合がある
受給資格が決定すると、離職理由にかかわらず、まず通算7日間の待期期間があります。
正当な理由のない自己都合退職では、待期期間の後に給付制限が設けられます。
2025年4月1日以降に離職した場合、正当な理由のない自己都合退職の給付制限は原則1か月です。
ただし、過去5年間に2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けている場合などは、3か月になることがあります。
給付日数が変わる場合がある
基本手当を受けられる日数を「所定給付日数」といいます。
所定給付日数は、主に次の条件によって異なります。
- 雇用保険に加入していた期間
- 離職時の年齢
- 自己都合、会社都合などの離職理由
- 就職困難者に該当するか
一般の離職者では、加入期間に応じて90日、120日、150日などに分かれます。
倒産や解雇などによる離職者や就職困難者は、年齢や加入期間により給付日数が長くなる場合があります。
離職票の内容を確認する
離職票の離職理由が、実際の退職経緯と異なっていることもあります。
内容に納得できない場合は、退職勧奨を受けたことが分かる書類、メール、就業規則など、状況を説明できる資料を持参してハローワークへ相談しましょう。
最終的な離職理由は、本人と会社双方の説明や資料を確認してハローワークが判断します。
失業保険の手続きの流れ

基本手当の手続きは、離職票を受け取った後、住所地を管轄するハローワークで進めます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 会社から離職票を受け取る |
| 2 | 離職理由などの記載内容を確認する |
| 3 | 必要書類を準備する |
| 4 | ハローワークで求職申込みをする |
| 5 | 受給資格と離職理由の確認を受ける |
| 6 | 雇用保険受給説明会などに参加する |
| 7 | 求職活動を行う |
| 8 | 指定日に失業認定を受ける |
| 9 | 認定された期間の基本手当が支給される |
離職票を受け取る
退職後、会社から雇用保険被保険者離職票1・2を受け取ります。
離職票が届かない場合や、会社と連絡が取れない場合は、住所地を管轄するハローワークへ相談してください。
必要書類を準備する
一般的には、次のような書類を準備します。
- 雇用保険被保険者離職票1・2
- マイナンバーを確認できる書類
- 本人確認書類
- 本人名義の通帳またはキャッシュカード
- 写真
必要書類は本人の状況や手続き方法によって異なる場合があります。
来所前に管轄のハローワークへ確認すると安心です。
ハローワークで求職申込みをする
ハローワークで求職申込みを行い、離職票を提出します。
このとき、希望する仕事の内容、勤務時間、勤務地、現在の健康状態なども確認されます。
受給資格の確認を受ける
ハローワークが雇用保険の加入期間、離職理由、失業状態などを確認し、受給資格を決定します。
離職理由に異議がある場合は、担当者へ事情を伝えてください。
説明会や失業認定を受ける
受給資格の決定後は、雇用保険受給説明会などで制度や認定方法の説明を受けます。
その後は求職活動を行い、指定された認定日に失業認定を受けます。
失業保険はいつから・いくら・何日もらえる?
支給開始時期、金額、給付日数は一律ではありません。
いつからもらえるか
受給資格が決定した後は、まず7日間の待期期間があります。
会社都合退職などで給付制限がない場合でも、求職申込みをした当日に基本手当が振り込まれるわけではありません。
失業認定を受けた後に、認定された日数分が支給されます。
自己都合退職などで給付制限がある場合は、待期期間と給付制限が終わった後の失業認定から支給が始まります。
実際の支給開始日は、認定日の設定や離職理由によって異なるため、受給資格決定時に確認しましょう。
いくらもらえるか
1日当たりの給付額を「基本手当日額」といいます。
基本手当日額は、原則として離職前6か月に支払われた賃金をもとに計算されます。
年齢別の上限額と下限額があり、基準は毎年見直される可能性があります。
正確な金額は、離職票を提出し、ハローワークから交付される雇用保険受給資格者証などで確認してください。
何日分もらえるか
所定給付日数は、雇用保険の加入期間、年齢、離職理由などによって変わります。
同じ年齢や同じ給与額であっても、離職理由や加入期間が異なれば、受け取れる日数が異なることがあります。
退職前に概算しても確定額ではない
インターネット上の計算ツールで概算できる場合もありますが、実際の基本手当日額や所定給付日数を決めるのはハローワークです。
退職後の生活費を考える際は、概算額だけを前提にせず、ある程度の余裕を持って計画しましょう。
病気やケガですぐ働けない場合はどうする?
病気やケガですぐ働けない場合は、基本手当の受給を急ぐのではなく、受給期間延長や傷病手当金などを確認する必要があります。
基本手当は働ける状態が前提
基本手当は、採用されればすぐに働ける状態にあることが前提です。
療養中で、仕事が決まっても働き始められない場合は、基本手当の対象となる失業状態に該当しない可能性があります。
受給期間の延長を確認する
基本手当を受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。
病気やケガなどで30日以上働けない状態が続く場合は、働けない日数を受給期間に加え、最大で離職日の翌日から4年間まで延長できることがあります。
受給期間延長は、基本手当を受け取れる日数そのものを増やす制度ではありません。
働ける状態になってから求職活動を始められるように、受給できる期限を延ばす手続きです。
申請が遅れると、延長が認められても所定給付日数のすべてを受け取れない可能性があります。
早めにハローワークへ相談しましょう。
病気やケガで働けない場合は、失業保険だけでなく、休職制度、傷病手当金、年金などの確認も必要になることがあります。詳しくは、「病気やケガで働けなくなったら最初に確認すること|休職・傷病手当金・失業保険・年金の流れを解説」も参考にしてください。
傷病手当金との違いを確認する
健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やケガにより働けず、給与を受けられない場合などに、健康保険から支給される制度です。
基本手当が「働ける状態で仕事を探している人」を支えるのに対し、傷病手当金は「病気やケガで働けない人」を支える点が大きな違いです。
| 制度 | 主な目的 | 対象になる状態 | 主な確認先 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険の基本手当 | 再就職活動中の生活支援 | 働ける状態で求職活動中 | ハローワーク |
| 健康保険の傷病手当金 | 病気やケガで働けない期間の生活支援 | 労務不能の状態 | 協会けんぽ・健康保険組合 |
| 受給期間延長 | 働けるようになるまで受給期限を延ばす | 30日以上働けない状態など | ハローワーク |
傷病手当金の申請から振込みまでの流れは、「傷病手当金は申請してからいつ振り込まれる?医師・会社・審査の流れ」で詳しく解説しています。
退職後の傷病手当金を確認する
退職前から健康保険の傷病手当金を受けていた人は、一定の条件を満たせば退職後も継続して受け取れる場合があります。
協会けんぽでは、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることなどが条件とされています。
退職日に出勤した場合は、退職後の継続給付を受けられないため注意が必要です。
病気やケガで退職する場合は、傷病手当金の継続給付に該当するかも確認しておきましょう。詳しくは、「傷病手当金は退職後ももらえる?継続給付の条件・退職日の出勤・申請方法」で解説しています。
雇用保険の傷病手当は別の制度
健康保険の「傷病手当金」と、雇用保険の「傷病手当」は名称が似ていますが、別の制度です。
雇用保険の受給手続きをした後に、病気やケガで15日以上働けなくなった場合は、一定の条件により雇用保険の傷病手当を受けられることがあります。
30日以上働けない場合は、受給期間延長を選べる場合もあります。
制度ごとに条件が異なるため、ハローワークと加入している健康保険の両方へ相談してください。
退職後に確認したい制度の違い

失業保険、傷病手当金、健康保険、年金は、それぞれ目的と相談先が異なります。
| 制度・手続き | 主な目的 | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 雇用保険の基本手当 | 再就職活動中の生活支援 | ハローワーク |
| 高年齢求職者給付金 | 65歳以上の離職者の求職支援 | ハローワーク |
| 健康保険の傷病手当金 | 病気やケガで働けない期間の生活支援 | 協会けんぽ・健康保険組合 |
| 受給期間延長 | 働けない期間に合わせて受給期限を延ばす | ハローワーク |
| 退職後の健康保険 | 医療保険の加入を継続する | 協会けんぽ・市区町村・家族の勤務先 |
| 老齢年金 | 老後の所得を支える | 年金事務所 |
健康保険の切り替えも必要
雇用保険の基本手当を申請しても、退職後の健康保険が自動的に切り替わるわけではありません。
退職後は、任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の扶養などから、自分の状況に合う方法を選ぶ必要があります。
退職後は、失業保険だけでなく健康保険の切り替えも必要です。任意継続、国民健康保険、家族の扶養の違いは、「退職後の健康保険はどうする?任意継続・国民健康保険・家族の扶養を比較」で詳しく解説しています。
年金との関係にも注意する
65歳になるまでの特別支給の老齢厚生年金などを受けている人が、ハローワークで基本手当の求職申込みを行うと、一定期間、年金が全額支給停止となります。
日本年金機構は、原則として求職申込みをした月の翌月から、基本手当の受給期間が経過した月などまで年金を支給停止すると案内しています。
すべての老齢年金が同じ扱いになるわけではないため、受け取っている年金の種類を確認し、年金事務所へ相談しましょう。
退職後の生活費を考えるときは、失業保険だけでなく、年金をいつから受け取るかも大切な判断材料になります。詳しくは、「年金は結局いつからもらうのがいい?支給額・手取り・生活費で考える判断ポイント」も参考にしてください。
退職後の失業保険で注意したいこと
手続きの遅れや申告漏れは、基本手当の受給に影響することがあります。
退職後に放置しない
基本手当を受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。
所定給付日数が残っていても、受給期間を過ぎると受け取れない可能性があります。
離職票が届いたら、働く予定や健康状態を整理し、早めに相談しましょう。
離職票の内容を確認する
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 離職票 | 基本手当の手続きに必要 |
| 離職理由 | 給付制限や給付日数に関係する場合がある |
| 雇用保険加入期間 | 受給資格に関係する |
| 働く意思 | 基本手当の前提になる |
| 健康状態 | すぐ働けるかを確認する |
| 年金の受給状況 | 年金との調整を確認する |
| 傷病手当金の有無 | 病気やケガで退職した場合に関係する |
アルバイトや収入を正確に申告する
基本手当の受給中にアルバイト、内職、手伝いなどをした場合は、収入の有無にかかわらず申告が必要になることがあります。
働いた日や収入を隠して基本手当を受けると、不正受給と判断され、返還や追加納付を求められる可能性があります。
迷う場合は、自分で申告不要と判断せず、認定日に担当者へ確認してください。
求職活動の記録を残す
求人に応募した日、相談した窓口、セミナーへ参加した日などを記録しておくと、失業認定申告書を記入しやすくなります。
応募メールや参加証明書なども、必要に応じて保管しておきましょう。
退職後の失業保険についてよくある質問
Q1.定年退職後でも失業保険はもらえますか?
再就職する意思と能力があり、雇用保険の加入期間などの条件を満たせば、対象になる可能性があります。
ただし、離職時に65歳以上の場合は、一般の基本手当ではなく高年齢求職者給付金の対象になることがあります。
Q2.退職したら誰でも失業保険をもらえますか?
誰でも自動的にもらえるわけではありません。
雇用保険の加入期間、働く意思と能力、求職申込み、求職活動、失業認定などの条件があります。
Q3.しばらく働くつもりがない場合でももらえますか?
基本手当は、すぐに再就職する意思がある人のための制度です。
しばらく休養する予定で、仕事が見つかっても働けない状態の場合は、その期間は対象にならない可能性があります。
Q4.病気やケガで働けない場合はどうなりますか?
すぐ働けない場合は、基本手当の対象となる失業状態に該当しない可能性があります。
30日以上働けない場合は受給期間延長、退職前から傷病手当金を受けている場合は退職後の継続給付などを確認しましょう。
Q5.失業保険と傷病手当金は同時にもらえますか?
基本手当と健康保険の傷病手当金は、目的と対象となる状態が違います。
基本手当は働ける人、傷病手当金は病気やケガで働けない人を支える制度です。
同じ期間に重複して受け取れるとは限らないため、ハローワークと健康保険の窓口で確認してください。
Q6.失業保険の金額はどこで分かりますか?
正確な金額は、ハローワークへ離職票を提出し、受給資格が決定した後に確認できます。
基本手当日額は、退職前の賃金や離職時の年齢などをもとに計算されます。
まとめ|退職後の失業保険は「働く意思」と手続きが大切
退職後の失業保険、正式には雇用保険の基本手当は、退職した人が自動的に受け取れる制度ではありません。
基本手当は、働く意思と能力があり、仕事を探しているにもかかわらず、就職できていない人を支えるための制度です。
そのため、しばらく働く予定がない人、病気やケガですぐ働けない人、家事や介護に専念している人、求職活動をしない人などは、受給できない可能性があります。
一方で、定年退職後であっても、再就職する意思と能力があり、雇用保険の加入期間などの条件を満たせば、給付対象になる可能性があります。
ただし、離職時に65歳以上だった人は、一般の基本手当ではなく、高年齢求職者給付金の対象になる場合があります。
病気やケガですぐ働けない場合は、無理に基本手当の手続きを進めるのではなく、受給期間延長や健康保険の傷病手当金を確認することが大切です。
健康保険、年金、雇用保険は、それぞれ目的も相談先も異なります。
退職後は、まず離職票の記載内容と雇用保険の加入期間を確認しましょう。
そのうえで、自分はすぐ働ける状態か、再就職を希望しているか、病気やケガによる療養が必要かを整理します。
離職理由、健康状態、年齢、年金の受給状況などによって扱いが変わるため、自分だけで受給資格を判断しないことも重要です。
分からないことがある場合は、住所地を管轄するハローワークや健康保険の窓口、年金事務所へ相談してください。
この記事が、退職後の制度を落ち着いて確認し、次の行動を考えるきっかけになれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考にした公的情報
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険手続きのご案内」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」
- 厚生労働省「令和7年8月1日からの基本手当日額等の適用について」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」
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